給料の支払いに関する仕訳【簿記3級】勘定科目と取引例の解説~法定福利費は?

簿記3級/給料の支払いに関する仕訳 

  当ブログにお越しいただきありがとうございます。会計的お仕事女子のあんがお送りする簿記の仕訳解説シリーズ記事です。今回は簿記3級で扱う取引のうち、従業員への給料の支払いに関する仕訳について解説していきます。

  • 従業員へ給料を支払ったときはどんな仕訳になるの?
  • 給料を支払うときは勘定科目は給料だけでいいの?
  • 給料を支払うとき、所得税の源泉徴収や住民税、社会保険料の控除額はどのように仕訳するの?
  • 交通費などの手当ても給料に含めて仕訳していいのかな?
  • 給料を支払った後の月締めや源泉所得税、社会保険料の納付のときはどう仕訳するの?

 などの疑問にお答えしていきます。このように、給料の支払い時の仕訳は予想以上に考えなければならないことが多いので、仕訳が複雑になり難しくなることが多いです。

 この記事を参考にして給料の支払いに関する仕訳をマスターし、簿記3級の合格への階段をまた一歩登っていってください!

 また、経理事務の方で給料支払い時の仕訳の例を確認したいという方も是非ご活用ください。それでは、よろしくお願いいたします。

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給料の支払いに関する勘定科目~給料勘定や法定福利費勘定などについて

  • 給料は給料勘定という費用の勘定科目を使う。
  • 通勤手当は旅費交通費(費用)として仕訳。
  • 給料支払い時の源泉所得税と住民税、社会保険料(年金や健康保険料)などの控除分については預り金勘定(負債)を用いる。
  • 月末に企業負担分の社会保険料を未払金勘定(負債)と法定福利費勘定(費用)を用いて計上する。
  • 社会保険料の企業負担分を納付した時には、法定福利費(費用)から振替えた未払金(負債)と従業員から預かっている預り金(負債)を減少させる。

 給料の支払いは、その内訳が細かいので仕訳の内容も細かくなってきます。また、従業員への給料の支払いのタイミングと、従業員から預かった源泉所得税や社会保険料の納付のタイミングが異なります。

 そこで、預り金勘定(負債)や未払金勘定(負債)を一時的に用いることになるのですが、ここがややこし部分となってきます。

給料の支払い時と月末および源泉所得税や法定福利費納付時の仕訳

 

給料を支払ったときの取引例と仕訳

 それでは、実際の取引の例で仕訳を見ていきましょう。

取引の例:従業員(2名)へ給与¥550,000と通勤手当¥60,000を普通預金口座から振り込んで支給した。なお、源泉所得税¥53,000、住民税¥23,000、社会保険料¥30,000、雇用保険料¥2,400円を控除した。

仕訳の手順①:給料(費用)の発生なので、給料¥550,000を借方に仕訳します。振り込んだ金額については源泉所得税などの控除分を計算しないと分からないので後回しにします。

(給   料)550,000(     )

仕訳の手順②:通勤手当¥60,000は旅費交通費(費用)として仕訳します。費用の発生ですから、旅費交通費(費用)を借方に仕訳します。

(給   料)550,000(     )

(旅費交通費)  60,000

仕訳の手順③:次に源泉所得税¥53,000、住民税¥23,000、社会保険料¥30,000、雇用保険料¥2,400円の控除分を預り金(負債)の増加として仕訳しましょう。

 これらは従業員の納付分を一時的に会社が預かり、後ほど会社が代理納付することになります。従業員から一時的に納付分を預かっているので、預り金勘定(負債)を使用します。

(給   料)550,000(     )

(旅費交通費)  60,000(預 り 金)53,000

             (預 り 金)23,000

             (預 り 金)30,000

             (預 り 金)  2,400

 ただし、預り金勘定は金額を合計せずに、内訳が分かるように分けて仕訳をしてください。実務の場合は摘要欄に源泉所得税なのか社会保険料なのか(厚生年金か健康保険かも)分かるようにメモを記載しておきます。

仕訳の手順③:最後に借方と貸方が釣り合うように給料(費用)と旅費交通費(費用)の合計額から預り金(負債)の合計額を差し引いて振込額を確定させてください。

 式に直すと¥550,000+¥60,000-¥53,000-¥23,000-¥30,000-¥2400という感じになります。

 普通預金口座から振り込むことになるので、普通預金(資産)の減少です。普通預金(資産)を貸方に仕訳して給与支払いの仕訳の完成です。

(給   料)550,000(普通 預金)501,600

(旅費交通費)  60,000(預 り 金)  53,000

             (預 り 金)  23,000

             (預 り 金)  30,000

             (預 り 金)    2,400

月末の取引例と仕訳

  • 社会保険料は企業負担分を法定福利費(費用)と未払金(負債)を用いて計上。
  • 源泉所得税や住民税は月末に仕訳はしない。

 社会保険料などの支払いは翌月ですから、月末に企業負担分の社会保険料を未払金勘定(負債)に計上する必要があります。社会保険料は企業負担分が50%ですから、企業負担分にあたる額(預り金と同額)を法定福利費勘定(費用)と未払金勘定(負債)を用いて計上します。

 また、源泉徴収した所得税や住民税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに税務署を通して国に納めなければなりません。ですが、源泉所得税や住民税は企業負担分ではなく、あくまでも従業員本人の負担額のみですから、預り金(負債)のままで月末に処理はしません。

 

取引の例:月末になったので、上記で支払った給料から社会保険料の会社負担分を計上する。

仕訳の手順①月末に計上するのは社会保険料の会社負担分だけです。会社負担分は従業員の負担額と同額ですから、先ほどの仕訳と同じ社会保険料¥30,000、雇用保険料¥2,400円の控除分と同額を法定福利費(費用)の発生として仕訳します。費用の発生ですから法定福利費(費用)を借方に仕訳しましょう。

 この場合も金額は合算せず内訳が分かるように分けて仕訳をしてください。実務の場合は摘要欄に雇用保険料などと記入し、内訳が分かるようにしておきましょう。

(法定福利費) 30,000(     )

(法定福利費)   2,400(     )

仕訳の手順②:社会保険料¥30,000、雇用保険料¥2,400円の企業負担分を法定福利費(費用)として計上しましたが、まだ納付はしていません。そこで未払金勘定(負債)の増加として仕訳します。負債の増加ですから未払金(負債)を貸方に仕訳します。

(法定福利費) 30,000(未 払 金)30,000

(法定福利費)   2,400(未 払 金)  2,400

 

社会保険料(法定福利費)納付時の取引例と仕訳

 社会保険料(法定福利費)の納付時は先ほど計上した預り金(従業員負担分)と未払金(会社負担分)を打ち消す仕訳をします。

 例えば、社会保険料を翌月に支払った際には、次のような仕訳となります。

 こちらも取引の例で見ていきましょう。

取引の例:従業員の給料から控除していた社会保険料¥30,000、雇用保険料¥2,400円とその会社負担分を普通預金口座から納付した。

仕訳の手順①従業員から控除していた社会保険料(法定福利費)は預り金(負債)で仕訳していますので、負債の減少として預り金(負債)を借方に仕訳します。会社負担分は未払金(負債)として仕訳してありますので、負債の減少として未払金(負債)を借方に仕訳します。

 この場合も実務では、摘要欄に内訳が分かるようにメモを忘れずに。

(預 り 金) 30,000(     )

(未 払 金) 30,000

(預 り 金)   2,400

(未 払 金)   2,400

仕訳の手順②:納付は普通預金口座から行っていますので、普通預金(資産)の減少です。資産の減少ですから、普通預金(資産)を貸方に仕訳します。

(預 り 金) 30,000(普通 預金)64,800

(未 払 金) 30,000

(預 り 金)   2,400

(未 払 金)   2,400

 

源泉所得税や住民税納付時の取引例と仕訳

  源泉所得税や住民税の納付時も、先ほど計上した預り金(負債)を打ち消す仕訳をします。

取引の例:従業員の給料から控除し預かっていた源泉所得税¥53,000、住民税¥23,000を普通預金口座から納付した。

仕訳の手順①従業員から控除していた源泉所得税¥53,000と住民税¥23,000は預り金(負債)で仕訳してあります。それを納付したので、負債の減少として預り金(負債)を借方に仕訳します。

 この場合も、実務では内訳が分かるように合算せず、摘要欄にはメモをしましょう。

(預 り 金) 53,000(     )

(預 り 金) 23,000

仕訳の手順①従業員から預かっていた源泉所得税¥53,000と住民税¥23,000は普通預金口座から納付しましたので、普通預金(資産)の減少です。資産の減少として普通預金(資産)を貸方に仕訳します。

(預 り 金) 53,000(普通 預金)76,000

(預 り 金) 23,000

 

 資産や負債、費用、収益の増減で借方になるか、貸方になるのかを再確認したい方はこちらの記事をどうぞ。仕訳の基本なのでとっても大事ですよ。

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給料の支払い時の仕訳と勘定科目のまとめ

  • 給料は給料勘定という費用の勘定科目を使う。
  • 通勤手当は旅費交通費(費用)として仕訳。
  • 給料支払い時の源泉所得税と住民税、社会保険料(年金や健康保険料)などの控除分については預り金勘定(負債)を用いる。
  • 月末に企業負担分の社会保険料を未払金勘定(負債)と法定福利費勘定(費用)を用いて計上。
  • 源泉所得税と住民税の預り金(負債)については月末に処理の必要はない。
  • 社会保険料の企業負担分を納付した時には、法定福利費(費用)から振替えた未払金(負債)と従業員から預かっている預り金(負債)を減少。
  • 源泉所得税と住民税を納付した時には、預り金(負債)を減少。

 さて、今回は簿記3級の仕訳として、給料を支払うときの仕訳についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。給料を支払うときの仕訳は、内訳も手順も複雑ですから、何回も確認してマスターしてください。

 

 ところで、簿記資格を生かして会計や経理関係の正社員に就職するには簿記2級以上の取得が必須です。簿記2級の難易度を考えると、独学ではなく簿記3級から通信講座でしっかりと基礎固めをしましょう。また確実に簿記3級を取得したい方も通信講座を利用したほうがいいですよ。

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 簿記通信講座の徹底比較記事もありますので、どうぞご覧ください。

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 それでは、日商簿記検定の試験勉強頑張ってくださいね!無事に難関を突破して会計職としてのキャリアアップを果てしてください!

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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