簿記の勉強たいへんお疲れ様です。会計的お仕事女子のあんがお送りする簿記3級シリーズ記事にようこそ。
いよいよ決算整理仕訳に突入した本シリーズですが、今回は売上原価の求め方を解説していきます。日商簿記3級の学習もここまでくればいよいよ最終段階です。売上原価の求め方を勉強していると…
- 売上原価とは何?
- 決算整理ではなぜ売上原価を計算しなければいけないの?
- 簿記3級の決算整理仕訳の売上原価の求め方が難しい…分かりやすく解説してほしい。
などのような疑問やご要望をおもちになるのではないでしょうか。これらの疑問やご要望に、日商簿記2級ホルダーで経理女子のあんがお答えしていきます。
売上原価の計算をマスターして、日商簿記3級合格へとまた一歩確実に踏み出しましょう!
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- 売上原価とは?なぜ決算整理仕訳で売上原価を計算するの?
- 商品の決算整理の練習と基礎知識~売上原価の求め方を理解するために
- 仕入勘定を使う売上原価の求め方の手順と決算整理仕訳
- 【決算整理仕訳】売上原価の求め方のまとめ
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売上原価とは?なぜ決算整理仕訳で売上原価を計算するの?
売上原価とは
- 売上原価とは販売した商品の仕入原価のこと。
- 決算の時の売上原価は当期に販売した商品の仕入原価のことをいう。
- 分記法では決算のときに、売上原価の計算は必要ない。
- 3分法で商品売買を記録している場合、決算のとき売上原価の計算が必要になる。
商品売買の記帳方法には、3分法と分記法がありますが、日商簿記3級で出題される商品売買の記帳法は、ほぼ間違いなく3分法です。ですから、今回の記事では、3分法での売上原価の計算の仕方を解説していきます。
ちなみに、分記法では商品を販売するたびに売上原価を記帳していますから、分記法では決算の時に売上原価の決算整理仕訳が必要がありません。
3文法で売上原価を計算するときは、次の式が当てはまりますので、覚えてしまってもいいでしょう。
- 期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価
期首商品棚卸高とは簡単にいうと期首の在庫です。当期商品仕入高というのは、当期の商品仕入額になります。期末商品棚卸高というは、期末(決算)のときの在庫です。式だけで覚えてもいいのですが、図にすると分かりやすいのでちょっと図で見てみましょう。売上原価は仕入勘定で計算するので、仕入勘定の動きだけ見てみます。
期首の在庫(期首商品棚卸高)は、当期ですでに売れてしまっていますからもう残っていません。当期に仕入れた分(当期商品仕入高)から期末の在庫(期末商品棚卸高)を引くと、当期に仕入れた分のうち、当期に売れた分の金額が分かります。
期首の在庫を売り切った分と、当期に仕入れた分のうち当期に売れた分を足したものが売上原価(当期に販売した商品の仕入額)になるとも言えますね。
なぜ決算整理仕訳で売上原価を計算するのか
では、なぜ決算の時に売上原価を計算しなければならないのでしょうか?理由は次のようになります。
- 当期の費用となるのは、当期の売上のための費用のみ。
- 仕入れて在庫となった商品は当期の売上にはなっていないので、当期の費用とはしない。
- 当期に売り上げた商品の売上原価(仕入原価)のみを当期の仕入費用とするので、売上原価の計算が必要になる。
決算整理仕訳は、すべて当期の費用や収益を正しく計算するために行うものです。当期の売上に関係のない費用は来期の費用としなければならないということです。売上原価の計算もこの考えに基づいて行うことになっています。
まだ在庫として残っている商品は、来期に売れるでしょうけど、その仕入費用は来期の費用としなければならないのです。しかし、すでに仕入の費用は支払う仕訳も行っていますよね。そこで売上原価(当期に販売した商品の仕入額)を計算する必要があるのです。
ですから、売上原価が分かった後には、仕入費用を減らす修正を行うことになります。この当期分の売上に合わせて仕入費用を減らす修正をするまでの一連の仕訳が、売上原価の決算整理仕訳になるのです。
また、当期の在庫(期末商品棚卸高)は商品としての価値がありますので、繰越商品勘定を使って資産として振替える決算整理仕訳も必要になります。
商品の決算整理の練習と基礎知識~売上原価の求め方を理解するために
それでは、まずは先ほどの「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価」を用いて、売上原価を計算する練習をしてみましょう。その後、実際に勘定を使って売上原価を計算し仕入費用の修正を行う決算整理仕訳に進むことにします。
売上原価計算の練習問題
練習問題:次の資料にもとづき、売上原価を計算しましょう。
<資料>
期首商品棚卸高(期首の在庫)洋服 3着 @¥1,000
当期商品仕入高 洋服 9着 @¥1,000
当期商品棚卸高(期末の在庫)洋服 2着 @¥1,000
解説と解答
この資料をもとに「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価」の式に上記の金額を当てはめていきます。その前に、期首商品棚卸高、当期商品仕入高、期末商品棚卸高の金額を求めてしまいましょう。
期首商品棚卸高は¥1,000×3着=¥3,000です。当期商品仕入高は¥1,000×9着=¥9,000です。当期商品棚卸高は¥1,000×2着=¥2,000です。
これらの金額を「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価」の式に当てはめると
¥3,000+¥9,000-¥2,000=¥10,000
よって、売上原価は¥10,000となります。
3分法の売上原価の求め方の基礎知識~売上勘定、仕入勘定、繰越商品勘定勘定とは
では、次に3分法で売上原価の計算をするために必要な基礎知識として、売上勘定、仕入勘定、繰越商品勘定勘定について解説しておきます。特に繰越商品勘定勘定の使われ方をしっかり分かっておくのが大切です。
売上原価を計算するときには次の3つの勘定を使います。3つの勘定を使うので3分法というんですね。
- 売上勘定(収益):当期の売上額を記録する勘定
- 仕入勘定(費用):当期の仕入額を記録する勘定
- 繰越商品勘定(資産):決算時に在庫になった商品を資産に計上するための勘定
これら3つの各勘定の決算整理前の残高は次のようになります。
- 売上勘定(収益):当期の売上合計額
- 仕入勘定(費用):当期の仕入合計額(当期商品仕入高)
- 繰越商品勘定(資産):期首商品棚卸高(期首の在庫額)
繰越商品勘定について
さて、決算整理仕訳をする理由が分かりやすくなるので、特に繰越商品勘定について簡単にご説明しておきます。
- 繰越商品勘定勘定はある会計期間の期末に売れ残った商品(期末商品棚卸高)を次の会計期間に資産として繰越すために使う資産の勘定。
- 繰越商品勘定は決算時の在庫を記載しているだけなので、繰越商品勘定は期中には動かない。
- 繰越商品勘定は決算時の在庫を記載し、期中には動かないので、決算整理前の繰越商品勘定の金額は、期首商品棚卸高が記載されている。
この中で一番重要なのが一番最後の決算整理前の繰越勘定の金額は、期首商品棚卸高になるというところです。決算の翌日以降か、期中か、決算整理前か、決算整理後かで繰越商品勘定の金額が表す棚卸高は種類が変わります。理屈が分かれば暗記する必要はありませんが、ちょっと難しいので下にまとめてみます。
繰越商品勘定が表すもの
- 決算日の翌日から:繰越商品勘定=期首商品棚卸高
- 期中と決算整理前:繰越商品勘定=期首商品棚卸高
- 決算整理後:繰越商品勘定=期末商品棚卸高
繰越商品勘定は決算時のみに使い、期中は動かないという使われ方のため、会計期間のどの位置に今いるかによって、繰越商品勘定が表すものが期首商品棚卸高、期末商品棚卸高と変わってしまいます。
最初のうちは暗記してしまっても構いませんが、理屈を分かった方が後々楽なので、慣れてきたら仕組みも覚えるようにしてください。
仕入勘定を使う売上原価の求め方の手順と決算整理仕訳
では、いよいよ売上原価の決算整理仕訳に進みます。まずは一番出題率の高い、仕入勘定で売上原価を計算する方法です。大まかに言うと、繰越商品勘定の金額を期首商品棚卸高から期末商品棚卸高に修正し、その後、仕入勘定の金額を当期商品仕入高から売上原価に修正する方法です。
まずは、手順だけを見てみましょう。
仕入勘定で売上原価を計算する手順
- 期首商品棚卸高を、繰越商品勘定(資産)から仕入勘定へ振替える。
- 商品の棚卸により求めた期末商品棚卸高を仕入勘定勘定の貸方へ記載する。
- 期末商品棚卸高を仕入勘定の貸方から繰越商品勘定の借方へ振替える。
文章の手順だけで見ると、ちょっと分かりにくいかもしれませんので、勘定の図を見ながら仕訳とともにご説明していきます。
①期首商品棚卸高を繰越商品勘定から仕入勘定へ振替
まず、期首商品棚卸高(繰越商品の決算整理前の残高)を、繰越商品勘定(資産)から仕入勘定に振替えます。そうすることで、期首商品棚卸高と当期商品仕入高を足したことになります。「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価」の赤色の部分です。
手順①:期首商品棚卸高の金額を振替えるために繰越商品勘定の借方に期首商品棚卸高を記載して繰越商品を減らします。
( ) (繰越 商品)○○○○
手順②:繰越商品の相手勘定に仕入を記入し、期首商品棚卸高を繰越商品勘定から仕入勘定の借方へ振替えます。これで期首商品棚卸高+当期商品仕入高の部分が完成します。ちなみに「○○○○」の部分は同じ金額が入ります。
(仕 入)○○○○(繰越 商品)○○○○
ここで「繰越商品勘定が0になるけどいいの?」と疑問に思う方もいるかと思います。期首商品棚卸高は既に当期で売り切っているので0になっているはずなのです。ですから振替えて繰越商品勘定が0になっても大丈夫なのです。
また、「なんで期首商品棚卸高を仕入勘定に振替えるの?」と疑問をもつ方もいらっしゃるでしょう。期首商品棚卸高は以前の会計期間に仕入れた商品の金額で、当期に売上げたものですから、当期の仕入にあたると考えて仕入勘定へ振替えます。
②期末商品棚卸高を仕入勘定から繰越商品勘定へ振替
次に期末商品棚卸高を仕入勘定から繰越商品勘定へ振替えます。そうすることで、期首商品棚卸高と当期商品仕入高を足した部分から期末商品棚卸高を差し引いたことになります。
「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価」の赤色の部分を行ったことになり、売上原価が求められます。
手順③:手順③に入る前に、期末商品棚卸高が棚卸作業により判明し、仕入勘定の貸方に記載されていることが前提です。その後、期末商品棚卸高の金額を振替えるために仕入勘定の貸方に期末商品棚卸高を記載して仕入を減らします。
( ) (仕 入)××××
手順④:仕入の相手勘定に繰越商品を記入し、期末商品棚卸高を仕入勘定から繰越商品勘定の借方へ振替えます。これで-期末商品棚卸高を行ったことになり売上原価が分かります。ちなみに「××××」の部分は同じ金額が入ります。
(繰越 商品) ××××(仕 入)××××
【決算整理仕訳】売上原価の求め方のまとめ
- 売上原価とは販売した商品の仕入原価のこと。
- 決算の時の売上原価は当期に販売した商品の仕入原価のことをいう。
- 当期に売り上げた商品の売上原価(仕入原価)のみを当期の仕入費用とするので、売上原価の計算が必要になる。
- 3分法で商品売買を記録している場合、決算のとき売上原価の計算が必要になる。
- 3分法での売上原価の計算は、繰越商品勘定、仕入勘定、売上勘定の3勘定を使う。
- 期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価
売上原価の求め方の手順
- 期首商品棚卸高を、繰越商品勘定(資産)から仕入勘定へ振替える。
- 商品の棚卸により求めた期末商品棚卸高を仕入勘定勘定の貸方へ記載する。
- 期末商品棚卸高を仕入勘定の貸方から繰越商品勘定の借方へ振替える。
さて、今回は日商簿記検定でよく出題され、しかも難しい分野とされる決算整理仕訳の売上原価の求め方についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ところで、簿記資格を生かして会計や経理の仕事に正社員として就職するには、簿記2級以上の取得が必須です。日商
簿記2級の難易度を考えると、独学ではなく簿記3級から通信講座でしっかりと基礎固めをしましょう。
また確実に日商簿記3級を取得したい方も、通信講座を利用をおすすめします。
私も通信講座で日商簿記3級と2級を取得し、経理の正社員へ転職しました。メールで質問ができたりスマホやパソコン、DVDなどで講義の動画を見れます。講義の動画は繰り返し何度も見れるので、通学講座より通信講座の方がおすすめです。
簿記通信講座の徹底比較記事もありますので、どうぞご覧ください。
それでは、簿記検定の試験勉強頑張ってください。あなたが簿記3級の試験を見事突破することを願っています。そして、ぜひ簿記2級まで取得し、経理正社員や会計事務所・税理士事務所職員として就職を果たすなど、キャリアップを実現させてください!
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました。