配当金の仕訳【簿記3級】繰越利益剰余金や利益準備金と取引例の解説

配当金の仕訳~繰越利益剰余金や利益準備金

 こんにちは。会計的お仕事女子のあんがお送りする簿記3級の検定用語解説シリーズ記事です。今回は簿記3級でよく出題される株式会社における利益の扱いと配当金や繰越利益剰余金、利益準備金の仕訳などについて解説していきます。

  • 株式会社で利益が出たときは、その後どのように扱うの?
  • 株をもっていると配当金をもらえるけど、会社が配当金を出す時の仕訳は?
  • 配当金ってどこから出すの?繰越利益剰余金と利益準備金の関係は?
  • 株式会社が配当金を出すときの取引例や仕訳問題の解説をしてほしい。

 などの疑問やご要望をおもちの方に向けて記事をまとめていきます。株式会社の利益の扱い方と配当金の仕訳について理解して、簿記3級合格への階段を確実に登っていきましょう!

 それでは、よろしくお願いいたします。

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株式会社が株主へ配当金を出すときの流れ

 株式会社は株主などから資金を調達し、これを運用したり元手に営業を行うことで利益を得ます。

 利益は決算日(会計期間の最終日)に計算されます。その収益をもとにして配当金を株主に分配することになります。

 それでは、決算日の利益の計算から配当金を出すところまでの一連の流れを取引例と仕訳の例を交えながら確認してみましょう。

 

①利益の計算をする

 まずは決算日に利益を計算するところからです。利益は決算日(会計期間の最終日)に収益と費用の差額により計算されます。収益と費用を集計して収益の方が多ければ利益が出たことになります。逆に費用の方が多ければ損失が出たことになります。

 決算手続きにより、収益・費用諸勘定は損益勘定へ金額を移されます。これを損益の振替えと言います。

 収益の方が多ければ借方に当期純利益が、費用の方が多ければ貸方に当期純損失が示されます。分かりやすくなるように図と箇条書きでまとめてみます。

  1. 費用の集計額を損益勘定の借方へ振替える。
  2. 収益の集計額を損益勘定の貸方へ振替える。
  3. 損益勘定の差額から当期純利益または当期純損失が分かる。

損益勘定で当期純利益を計算する図

株式会社の利益の種類

 ちなみに株式会社の利益については、次のような種類があります。

  • 営業利益:会社が本業で稼いだ利益のこと
  • 経常利益:会社が本業と本業以外で得た利益のこと
  • 純利益:会社の全ての収入から全ての支出(税金を含む)を引いた利益

 簿記3級で扱うのは純利益のみですので、営業利益と経常利益については参考程度でよいでしょう。

 簡単にご説明しておくと、営業利益は会社が本業で稼いだ利益のことです。自動車販売業なら自動車を仕入れて販売した収益から、販売するために使った費用を差引いた額が営業利益となります。式に直すと、営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費となります。

 経常利益は会社が本業と本業以外で得た利益のことですから、先ほどの営業利益に保有している株式の売却損益や評価損益、銀行への利息の支払いや受け取りなどを加えたものになります。こちらも式に直して簡単に表すと経常利益=本業の利益(営業利益)+資産運用の利益のことになります。

 純利益は経常利益に更に臨時的な「特別利益」や「特別損失」を加えて収益を計算したものです。特別利益には不動産などの固定資産売却益などが当たります。更に、純利益からは法人税や住民税などの税金も差引かれます。つまり、純利益とは企業がすべての支払いを済ませ、最終的に会社に残ったお金のことです。

 簿記2級からは営業利益も経常利益も出題範囲に入りますので、簿記2級を目指す方は頭の片隅にでも入れておいてください。

 

②利益を繰越利益剰余金へ振替える

  会社の当期純利益が確定したら株式会社では株主総会で利益の使い道を決定します。その使い道が決まるまでは利益は繰越利益剰余金勘定(資本)に振替えておきます。

当期純利益を繰越利益剰余金へ振替える図

仕訳の手順①:損益勘定の貸方残高(当期純利益)を振替える(移す)ために損益勘定の借方に仕訳をして損益勘定を減らします。※〇〇〇は同額の金額。

(損   益)○○○ (     )

仕訳の手順②:繰越利益剰余金勘定の貸方へ仕訳をして、資本である繰越利益剰余金を増加させます。損益勘定の貸方(当期純利益)が減って繰越利益剰余金が増加したので損益勘定の貸方から繰越利益剰余金へ振替えられたことになるのです。

(損   益)○○○ (繰越利益剰余金)○○○

 

 なお、当期純損失が生じた場合には、当期純利益の場合と逆の仕訳なります。当期純損失分を繰越利益剰余金から補填すると考えるといいでしょう。

繰越利益剰余金)○○○ (損   益)○○○

 

③剰余金の配当額が株主総会で決定する

  • 剰余金の配当とは、剰余金の一部を株主へお金などにより分配すること。
  • 配当金の額は株主総会などで決定される。

 

④配当金を出すために利益準備金を積み立てる

  • 配当金を出すときは、その額の10%を利益準備金として積み立てる。

 剰余金を配当すると会社の財産が減ります。会社の財産が減り過ぎると会社の財政基盤が弱くなります。配当金を出し過ぎるのもよくないということです。

 そのため、会社の財政基盤が弱くなりすぎないように、剰余金の配当をする場合には会社の財政基盤を強化するために一定の額を準備金として積み立てることが会社法により決まっています。

 会社法では繰越利益準備金から配当金を出す場合、配当金の10%を利益準備金として原則積み立てなければならないことになっています。

 

⑤繰越利益剰余金を財源にして配当金を出す会計処理を行う

  最後に、株主総会で決まった配当金の額に従い、繰越利益剰余金から配当金を出す会計処理、いわゆる仕訳を切ります。

 繰越利益剰余金から配当金を出す時の仕訳や取引の例については、次で詳しく解説しますね。

 

繰越利益剰余金から配当金を出す時の仕訳と取引例の解説

株主総会で配当金の額が決まったときの取引例と仕訳

 株主総会において配当金の額が決定したときは、まだ配当金の支払いが行われていません。そのため、未払配当金勘定(負債)の貸方に仕訳をします。

 未払配当金は後日金銭を支払う義務ですから債務となり負債の勘定科目となります。

  それでは、実際の取引の例で仕訳を見ていきましょう。

取引の例:株主総会で、繰越利益剰余金を財源とした剰余金の配当などが次のとおり決定した。

配当金 ¥300,000  利益準備金 ¥30,000

仕訳の手順①:配当金の支払いと金額が決まりましたがまだ支払いはしていませんので、未払配当金(負債)が増加します。負債の増加ですから、未払配当金(負債)を貸方に仕訳します。

(     )     (未払配当金)300,000

仕訳の手順②:配当金を出すには利益準備金(資本)を積み立てる必要があります。資本の増加ですから、利益準備金(資本)を貸方に仕訳します。金額は指定の¥30,000をそのまま記入しましょう。

(     )     (未払配当金)300,000

            (利益準備金)  30,000

 今回の問題では利益準備金の額は指定されていますが、配当金の額から利益準備金の金額を計算できるよう、利益準備金=配当金×10%は覚えておいた方がいいでしょう。

仕訳の手順③:配当金の財源は繰越利益剰余金ですから、繰越利益剰余金(資本)が減少します。資本の減少ですから繰越利益剰余金(資本)を借方に仕訳します。

繰越利益剰余金)330,000(未払配当金)300,000

            (利益準備金)  30,000

 仕訳は自分の分かりやすいほうから切るのがポイントです。未払配当金(負債)や利益準備金(資本)の増加で貸方に仕訳するよりも、先に繰越利益剰余金(資本)の減少で借方に仕訳をする方が分かりやすい場合は、繰越利益剰余金(資本)の減少から仕訳を切りましょう。

 資産や負債、資本、費用、収益の増減で借方になるか、貸方になるのかをあらためて確認したい方はこちらの記事をご覧ください。仕訳の基本ですから大変重要です。

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配当金を支払ったときの取引例と仕訳

取引の例:先ほどの取引の配当金¥300,000を小切手を振出して支払った。

仕訳の手順①:小切手を振出しているので、当座預金(資産)の減少です。資産の減少ですから、当座預金を貸方に仕訳します。

(     )     (当座 預金)300,000

仕訳の手順②:配当金を支払ったので未払配当金(負債)の減少です。負債の減少ですから未払配当金(負債)を借方に仕訳します。

(未払配当金)300,000(当座 預金)300,000

 今回の配当金の仕訳で出てきた繰越利益剰余金や利益準備金について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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配当金の仕訳と繰越利益剰余金や利益準備金のまとめ

配当金を出す時の流れと利益剰余金や繰越利益剰余金

  1. 損益勘定を用いて利益の計算をする
  2. 利益を繰越利益剰余金へ振替える
  3. 剰余金の配当額が株主総会で決定する
  4. 配当金を出すために利益準備金を積み立てる
  5. 繰越利益剰余金を財源にして配当金を出す会計処理を行う

配当金の仕訳のまとめ

  • 配当金を出す時はその額の10%を利益準備金として積み立てる。
  • 配当金の額が決定したら、繰越利益剰余金(資本)と利益準備金(資本)、未払配当金(負債)の勘定科目を用いて仕訳をする。
  • 配当金を支払ったら、未払配当金(負債)を減少させて仕訳をする。

 

 さて、今回は簿記3級でよく出題される株式会社の配当金の仕訳と繰越利益剰余金や利益準備金について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 ところで、簿記資格を生かして会計や経理関係の正社員に就職するには簿記2級以上の取得が必須です。簿記2級の難易度を考えると、独学ではなく簿記3級から通信講座でしっかりと基礎固めをしましょう。また確実に簿記3級を取得したい方も通信講座を利用したほうがいいでしょう。

 私も通信講座で簿記3級と2級を取得しました。メールで質問ができたりスマホやパソコン、DVDなどで講義の動画を繰り返し何度も見れますので、通学講座より通信講座の方がおすすめです。

 簿記通信講座の徹底比較記事もありますので、どうぞご覧ください。

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 簿記3級検定試験の勉強コツコツ頑張ってくださいね。無事に3級の試験を突破して経理・会計職デビューされることを祈っています。

 それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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